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有限会社プロソフト

家庭用ゲーム(コンシューマ)、ソーシャルゲーム(ネイティブアプリ/サーバー)の開発会社


私が独学でゲーム会社へ入るまで(2)

文責:nitro

私が独学でゲーム会社へ入るまで(2)

・迷走する
 ここまで言語の文法を覚えるためだけの短いコードしか触ってこなかったので、単位を変換するプログラムを改造したり文字列の前後をひっくり返したりで満足していましたが、某所にて『1時間以内にテトリスを作る』旨の動画を見てからは徐々にゲームらしきものへ興味が移ります。
 これはコンパイラのインストールからゲーム中で使う画像素材に至るまで即席で作るという内容で、ある程度の規模のプログラムが仕上がっていく様子を眺めるのはそれが初めてでした。
 先の通り初歩的なプログラムからいきなりウィンドウアプリの、それもリアルタイムで進行するゲームだったので、ソースコードにびっしり並んだ呪文やOSに用意されている『API』なるものに面食らいました。
 今までは自分しか読まないコードを書いていたので、人によって異なるお作法が存在すること、誰かが書いたライブラリを拝借するときは大人しくそのお作法に従うと事故が少ないこと、等を覚えました。
 その後『Advanced Windows』を読んでプラットホームに対する理解を深め、られるほどの下地は無かったのでつまづき、これを読むための下準備が後々の勉強を助けることになります。
 考え方が変わった点として、今までは言語の文法を覚えるためのサンプルソースを片っ端から試していましたが、そこから先の応用になってくると、巷のサンプルを虱潰しにしていてはいくら時間があっても足りませんし、自分が作りたいものが何なのかをはっきりさせてから取り組まないとモチベーションが保てないばかりか、『同じ絵を出しっぱなしにするスクリーンセーバー』を作って悦に入りかねないので気を付けたいところです。

・ゲーム業界に興味を持つ
 親の目を盗んで登録したオンラインゲームに興じたあたりで容態が変わります。
 人をダメにすると風の噂に聞いてやって来たため火遊びの範疇でしかありませんでしたが、白物家電の回路設計をしているという人とゲーム内で知り合い、『人月の神話』という穏やかではない本を知ります。
 初版が40年以上前ながら、ソフトウェア開発で起き得る『ブラック』な問題について今でも通用するヒントが丁寧に纏められており、業界の古典として扱われているようです。
 特に、納期が迫っているときに人を増やすと悪化する、の件を読んだときの衝撃は忘れられません。
 この本を勧めてくれた人は、私がそちらの畑に興味があると漏らしたときにその話をしたので、悪いことは言わないから引き返した方がいいという意図は何となく伝わりました。
 伝わりましたが聞き分けもなかったので、これを期に就職先としてゲーム業界を考えるようになります。
 これが、子どもの時分にゲームを封じられた反動かどうかは分かりませんし、プロソフト入社の半年前まで某狩猟ゲームの販売元すら知らなかったことを考えると、この業界へ近付いたのはむしろ事故のようなものだった疑いがあります。
 結果的に両親の許しもあったので遮るものがなくなり、それからは『ゲームプログラマになる前に覚えておきたい技術』というタイトル通りの本で1年ほど足踏みが続きます。
 この界隈ではベストセラーらしく、なるほど新人教育の過程で生まれたというだけあって失敗に対する注釈が細かく、むしろ作業中の心の中を読まれているような錯覚はホラーに近く、巻末の参考文献リストがその後の独学コースを支えることになります。
(つづく)